第11回で「危害分析と重要管理点」、第12回で「管理基準とモニタリング方法」といった、HACCPの急所となる原則1~4を説明してきました。
今回は、安全な食品製造のための、HACCP運用に関する原則5~7について説明します。
修正処置の設定(原則5、手順10)
HACCPでは、危害分析をして重要管理点を決め、その重要管理点における管理基準が守られているかどうかモニタリングします。管理基準が守られていれば問題はありません。ところが、管理基準を守れず逸脱してしまったときには、通常とは違う対応が必要になります。それが修正処置です。
修正処置の内容は2つあります。
処置① その製造工程を正常な状態に戻す処置
例えば加熱工程の温度が管理基準よりも低かった場合、製造ラインの異常を直さなければなりません。
処置② 逸脱の間に製造された製品への処置
管理基準を満たしていない間に製造した製品は加熱不足になっていますから、加熱不足になっている可能性のある製品を特定し、手直しまたは廃棄しなければなりません。
修正処置には、要点が2つあります。1つはあらかじめ文書で規定しておくこと、もう1つは修正処置の実施記録を残しておくことです。前者は、すばやく修正処置を実施するためです。後者は、修正処置の適切性を確認できますし、HACCPプランの見直しのための評価につながります。
検証方法の設定(原則6、手順11)
検証には、2つの意味があります。1つは、HACCPプランに従って運用されているかどうか確認すること。もう1つは、HACCPプランが適切に機能しているか確認することです。
運用に関する検証の内容は、モニタリングが適切に行われているか、モニタリング・修正・検証の記録は適切か、モニタリングで使用する測定機器は正常かを確認します。
一方、HACCPプラン自体に問題があると、HACCPは機能しなくなります。例えば管理基準は守られているのに加熱不足が発生していたとすれば、管理基準自体を見直さなければなりません。消費者からの苦情、製品検査での不合格の場合も、見直しの可能性があります。また、原料、製品規格、製造工程の変更があった場合も検証が必要です。
記録の維持管理(原則7、手順12)
正確な記録は、HACCPが適切に運用されていること、修正処置が適切に行われていることの証拠です。また担当者が記録を取るということは、製造現場でHACCPの運用が徹底されることにもつながります。
HACCPにおいて記録が必要なものは、次のとおりです。
1. モニタリングの結果
2. 修正処置の実施結果
3. 検証の実施結果
4. 一般的衛生管理プログラムの実施結果
いずれの記録も、記録すべき項目漏れを防ぐため、あらかじめ様式を決めておかなければなりません。